ガン光免疫療法とは?効果なし?保険適用外の理由や仕組みや副作用、デメリットについても解説

「ガン光免疫療法ってどんな治療法なんだろう。全てのがんに効果あるのかな」

「保険適用って聞いたんだけど、ほんとかな」

「抗がん剤みたいにきつい副作用はあるのかな」

このように、ガン光免疫療法に興味を持っている方も多いのではないでしょうか。

ガン光免疫療法は、近年注目されている治療法ですが、従来のがん治療と何が違うのか知らない方も多いでしょう。

また、光免疫療法は他の免疫療法とどのような違いがあるのでしょうか。

そこで今回は、光ガン免疫療法について解説します。気になる保険適用についても説明します。

ガン光免疫療法について興味のある方もなんとなく知っておきたい人もぜひ参考にしてください。

ガン光免疫療法とは

ガン光免疫療法の仕組みについて

光免疫療法とは、がん細胞のみに付着する特殊な薬剤を投与し、その薬剤にのみ反応する光を照射することで、がん細胞だけを破壊できるという画期的な治療法です。

楽天傘下の楽天メディカルによって光免疫療法イルミノックス治療が開発され、2020年9月には「切除不能な局所進行・局所再発頭頸部がん」への適用が承認され、2021年1月からは保険適用が認められています

がん光免疫療法のメカニズムは、まず最初に選択的に特定のがん細胞に集まる薬剤を投与することから始まります。

その後、特定の波長を持つ光(近赤外線)を照射することによって、特定のがん細胞を壊死・排除させることを期待するというものです。

従来の化学療法や放射線治療では、がん細胞だけでなく正常な細胞まで攻撃してしまうデメリットがありました。

光免疫療法では理論上がん細胞のみを攻撃することから注目されている治療法なのです。

ガン光免疫療法が期待できるがんについて

ガン光免疫療法は、がん細胞にマーキングし。光を照射してマーキングしたがん細胞を破壊するという治療法のため、理論上はすべてのがん細胞に効果を発揮すると考えられています。

ただし、現時点で保険適用として認可されているのは、「切除不能な局所進行・局所再発頭頸部がん」のみです。

現在の日本の医療では、保険診療と自由診療を併用することは禁止されているため、「切除不能な局所進行・局所再発頭頸部がん」以外のがんに光免疫療法を行う病院は限られているのが実情です。

自由診療で光免疫療法を行っている病院であれば、対応できる場合もありますので、まずは問い合わせてみるとよいでしょう。

ガンの光免疫療法のメリット

ガン光免疫療法では以下のようなメリットが期待できます。

  • 副作用が少ない
  • 再発・転移のリスクが少ない
  • ステージ4などの重いがんにも有効
  • 短期間の入院で治療がおこなえる

副作用が少ない

ガン光免疫療法では、抗がん剤による化学療法や放射線治療などの一般的ながん治療で起こりやすい「吐き気」「脱毛」などの副作用は少ないと報告されています。

ガン光免疫療法は正常な細胞は攻撃せず、特定のがん細胞にのみ効果を発揮するという作用機序から考えても、副作用は少ないと考えられます。

ただし、頸動脈出血及び腫瘍出血や光線過敏症などの副作用が起こる可能性はあります。

また、ガン光免疫療法は、まだまだ研究中の治療法が多く、症例も少ないのが実情です。

今後新たに重篤な副作用が出てくる可能性がありますので、注意しておく必要があります。

再発・転移のリスクが少ない

ガン光免疫療法は、光線を照射することでがん細胞を直接攻撃する以外に、もう一つの効果が期待できます。

近赤外線照射で破壊したがん細胞から、がん細胞由来の抗原が体内に放出されます。

このがん抗原を自身の免疫細胞が認識することで、がん細胞に対する免疫を活性化する効果が期待されます。

この免疫活性は長期間持続するため、がんの再発や転移を防ぐことが期待されています。

標準治療で取り切れなかったがん細胞があったとしても、光免疫療法を併用することで、理論上再発・転移のリスクを減らすことが可能なのです。

ステージ4などの重いがんにも有効

光免疫療法は、体内のあらゆる場所にできたがん細胞組織の近くに近赤外線をあてて腫瘍を破壊します。

また、その周囲に散らばったがん細胞を免疫細胞によって駆除させることができるという、2つの作用を期待できる治療法なのです。

近赤外線照射で破壊したがん細胞より、細胞由来の抗原が体内に放出されることで、自身の免疫細胞がそれを認識します。

その結果、がん細胞に対する免疫が活性化されるため、照射した部位だけでなく全身に転移した腫瘍にも治療効果を発揮することが期待できます。

そのため、標準治療の適応がないステージ4などの末期がんの患者さんへの治療にも、理論上は適応できるのです。

短期間の入院で治療がおこなえる

光免疫療法は、短期間の入院で治療をおこなうことができます。

入院初日に近赤外線に反応する薬を点滴され、2日目に近赤外線を照射します。

その後1週間目までは、光線過敏症などの副作用を防ぐ為、入院を継続し光の被ばくを避ける必要があります。

光に対する照射テストで問題なければ退院できます。

外科手術や、入院が必要な重たい化学療法や放射線治療の場合と比べると、比較的短期間で退院できます。

ただし、2週目以降も光線過敏症になる可能性が高いと判断された場合は入院期間が延長となりますので注意しておく必要があります。

ガン光免疫療法と他の免疫療法との違いについて

光免疫療法以外にも、以下のようなガン免疫療法が実用化されています。

  • 樹状細胞ワクチン療法
  • NK細胞療法
  • NKT細胞療法

ここからは、それぞれの免疫療法の特徴について解説します。

樹状細胞ワクチン療法

樹状細胞ワクチン療法は、樹状細胞がリンパ球にがんの目印を教えることで、がん細胞の破壊を促す免疫療法の一種です。

樹状細胞は、リンパ球などの免疫細胞にがん細胞などを異物と認識させて、攻撃させることができる細胞です。

「樹状細胞」を使って、リンパ球にがんの特徴を覚えこませます。

その樹状細胞から指令を受けた免疫細胞は、がんを特異的に攻撃し破壊することが期待されます。

がんは、通常、リンパ球やNK細胞などの免疫防御機構により破壊されますが、この免疫坊業機構を逃れて成長するがん細胞も存在します。

この成長したがん細胞は、通常の免疫機構では防御できません。

樹状細胞ワクチン療法は、このような免疫防御機構から逃れて成長をはじめたがんに対して、再度がんを攻撃するように指令を与えることを期待できる治療法なのです。

樹状細胞ワクチン療法は、がんの切除手術や抗がん剤治療、放射線療法などの一般的ながん治療と組み合わせることで、相乗効果を狙う療法です。

NK細胞療法

NK細胞療法は、自己の血液中のNK細胞を高活性化培養し、点滴で体内に戻してがん細胞を攻撃し、破壊することを期待するガン免疫療法の一種です。

NK細胞には、がん細胞を直接攻撃できるという機能があります。

成長したがん細胞は、免疫機構をくぐりぬけてきた細胞であり、通常の免疫機構では対処できないじょうたいになっています。

しかし、NK細胞療法により活性化したNK細胞によって、直接及び間接的にがん細胞を攻撃することで、がん細胞を縮小させたり、がんの進行を抑制したりする効果が期待できるのです。

抗がん剤治療による免疫抑制で、がん細胞に対する抵抗力も落ちてしまった場合の免疫増強など、がんの再発を抑制するための予防にも効果が期待できます。

樹状細胞ワクチン療法と同様に、NK細胞療法も切除手術や抗がん剤治療、放射線療法などの一般的ながん治療と組み合わせることで有効性が期待できる治療法となっています。

NKT細胞療法

NKT細胞療法は、がんへの攻撃を担当する免疫細胞のNK細胞とT細胞を活性化させることで、持続的にがん細胞への攻撃を期待する治療法です。

NKT細胞は、T細胞、B細胞、NK細胞に続く「第4のリンパ球」と呼ばれています。

通常、病原体や異物への感染防御において、欠かせない免疫細胞として働いているのです。

ただし、自己の正常細胞からできたがん細胞に対しては、NKT細胞は十分な働きをすることはできません。そのため。

NKT細胞を人工的に活性化する物質「αGalCer」を加えることで、NKT細胞は活性化することができます。

活性化されたNKT細胞は、がん細胞を直接攻撃するだけでなく、がん細胞のチェックポイント機能(免疫機能を低下させる機能)を阻害することも期待できます。

また、活性化NKT細胞には、がんに対する免疫を記憶する幹細胞を作る機能も備わっているため。がん細胞に対する免疫を長期間保持することが期待されます。

ガン光免疫療法は効果なし?デメリットについて

ガン光免疫療法のデメリットは以下の通りです。

  • 治療できる部位が限られる
  • 直射日光を避けること
  • 即効性のある治療ではない

治療できる部位が限られる

現時点で、光免疫療法で治療が認められているがんは、「切除不能な局所進行・局所再発頭頸部がん」のみです。

他の部位への光免疫療法は保険適用が認められない自由診療になるため、費用が高額である点と、十分な保障がされない可能性があることを認識しておく必要があります。

ただし、そもそも自由診療で構わないということであれば、「切除不能な局所進行・局所再発頭頸部がん」以外のがんにも光免疫療法に対応してくれる医療機関は存在します。

自己責任かつ自己負担で光免疫療法を受けたい方は、これらの医療機関に相談してみましょう。

その際に、疑問に思う点はしっかりと医師に相談し、納得して治療を受けるようにしてください。

直射日光を避けること

光免疫療法は、近赤外線を使用します。近赤外線に反応する薬剤でマーキングされたがん細胞のみを破壊しますが、照射部位の皮膚にダメージを与えたり、光線過敏症などの副作用を引き起こすこともあります。

近赤外線によりダメージを受けた皮膚に日光などの強い光を当ててしまうとさらに皮膚に悪影響を及ぼしてしまいます。

そのため、照射後一週間程度入院する必要がありますし、退院後少なくとも4週間は直射日光などの強い光を避けて生活しなければなりません。

外出はなるべく避け、基本的に室内で過ごすようにする必要があります。

室内照明は標準的な明るさとし、読書灯などの強い光がでるものは使用をしないなどの注意が必要です。

即効性のある治療ではない

ガン光免疫療法には、薬のような即効性は期待できません。

がん細胞を破壊する効果もありますが、切除療法などと比べると即効性には欠けます。

また。がん細胞に対する免疫機能を蓄積していくという治療の性格上、すぐに完治するというわけではありません。

光免疫療法は、がん治療の土台と位置づけるようにしましょう。

例えば、現状ではがんの切除は難しいが、光免疫療法と組み合わせることで切除が可能になったりする場合もあります。

メインの治療は化学療法や放射線治療で行い、再発や転移を予防するために光免疫療法を行うという考え方もあるはずです。

光免疫療法は、化学療法や放射線治療といった従来の実績のあるがん治療と組み合わせることで、より効果を発揮していく治療法なのです。

ガン光免疫療法の保険適用はいつから

ガン光免疫療法は、一部のがんが保険適用されています。

楽天傘下の楽天メディカルによって光免疫療法イルミノックス治療が開発され、2020年9月には「切除不能な局所進行・局所再発頭頸部がん」への適用が承認され、2021年1月からは保険適用が認められました。

ただし、「切除不能な局所進行・局所再発頭頸部がん」であっても、化学療法や放射線治療などの標準治療が適用となる場合は、光免疫療法は保険適用になりません。

なぜ光免疫療法は、保険適用になりにくいのでしょうか。

保険適用となるためには、大規模な治験を行い、効果と安全性がしっかり担保される必要があるのです。

ただし、「切除不能な局所進行・局所再発頭頸部がん」で有効症例数が増えていけば、今後他の部位にも適用が広がる可能性はあるのではないでしょうか。

ガン光免疫療法にてよくある質問

従来のガン治療との違いはなんですか?

従来のガン治療では、がん細胞以外の正常な細胞までダメージを与えるため、吐き気、胃腸障害、下痢、皮膚症状などの副作用が最大の問題でした。

また、転移が進み切除できないステージ4などのがんには適用できないという問題もあります。

これに対し、ガン光免疫療法は、特定のがん細胞のみを攻撃できることから、従来のガン治療よりも副作用が少ないといわれています。また、光免疫療法は、がん細胞に対する免疫も活性化する効果が期待できるため、末期がんなどへの効果も期待されています。

今までのガン治療をしながら併用して行えますか?

ガン光免疫療法は、標準治療と組み合わせることでその効果を高めることが期待されています。

例えば、ガンの切除手術では取り切れなかったがん細胞が再発や転移の原因となっていました。

これに光免疫療法を合わせることで、がん細胞に対する免疫を活性化させ、再発や転移を予防することが、理論上は可能となります。

また、化学療法や放射線治療と光免疫療法を組み合わせることで、ステージ4のがんへの効果も期待できます。

免疫療法の注意点は何がありますか?

光免疫療法をはじめとして、ガン免疫療法はまだまだ新しい治療法です。

比較的副作用は少ないといわれていますが、今後症例数が増えてきたときに、重篤な副作用が報告される可能性もあります。

また、ほとんどの免疫療法は保険適用外となるため、治療にかかる費用は高額になります。

自由診療となるため、何か重篤な副作用は起こってしまった場合も国の補償制度の対応外になることも注意しておく必要はあるでしょう。

光免疫療法の効果についてのまとめ

今回はガン光免疫療法について解説しました。

がん細胞に特異的に攻撃することや、がん細胞への免疫も獲得できることが期待されるため、従来の標準治療よりも副作用が少なく、転移がんなどにも有効なのではないかといわれています。

ただし、現状で保険適用となるのは頭頸部がんの一部に限られており、あくまでも標準治療の補助的な存在であるということを認識しておきましょう。