最新のがん治療「ウイルス療法」とは?治療薬の仕組み・効果・副作用・費用を徹底解説!

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国立がんセンターがん対策情報センターによると、日本人男性の2人に1人、女性の3人に1人がなんらかのがんになると言われています。

そんな中、がんの治療方法は日々研究が進められており、現在新しいがん治療として世界から注目を浴びている治療法があります

本記事ではそんな新しいがん治療について、詳しく解説していきます。

最新のがん治療は「ウイルス療法」

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最新のがん治療に「ウイルス療法」があります。がん治療には「手術療法」、「放射線治療」、「薬物治療」、「免疫療法」の4種類があり、2021年に新しい治療法として「ウイルス療法」が承認されました

ウイルス療法はウイルスの特徴を逆手にとった治療です。がん細胞にのみ感染して繁殖し、がん細胞を破壊します。現在世界で注目を集めている治療法です。

参考:NHK健康ch「ウイルスの増殖力を利用したがん治療 腫瘍溶解性ウイルス療法とは?」

最新がん治療「ウイルス療法」はがん細胞だけを殺す治療法である

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最新のがん治療である「ウイルス療法」は、がん細胞だけを殺す治療法です。ウイルス療法で使われるウイルス「G47Δ(ジーよんじゅうななデルタ)」は、単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)の改良型です。

人工的にがん細胞でのみ増殖するように改良されており、正常な細胞では増殖しません。正常な細胞にはダメージを与えないため、安全性が高いのも特徴です。

参考:東京大学医科学研究所「がん治療用ヘルペスウイルスG47Δの実用化へ最終段階」

最新がん治療「ウイルス療法」の仕組み

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G47Δはがん治療用遺伝子組換えヘルペスウイルスである

G47Δはがん治療用遺伝子組換えヘルペスウイルスで、単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)が元になっています。単純ヘルペスウイルス1型には、がん治療に有利な特徴があります。

単純ヘルペスウイルス1型はヒトのさまざまな細胞に感染でき、細胞を破壊する力が強いです。また患者がウイルスに抗体を持っていたとしても、治療効果が弱まらないのも特徴です。抗ウイルス薬があるため、必要に応じて治療を中断することもできます

参考:東京大学医科学研究所「がん治療用ヘルペスウイルスG47Δの実用化へ最終段階」

単純ヘルペスウイルス1型の特徴

・細胞を破壊する力が強い
・ヒトのさまざまな細胞に感染できる
・抗体があっても治療効果が弱まらない

世界初の悪性脳腫瘍の治療薬として承認を得られた

G47Δは世界で初めて悪性脳腫瘍の治療薬として承認を受けました。G47Δの臨床開発は、東京大学医科学研究所附属病院の脳腫瘍外科の研究グループが行っており、現在、東京大学医科学研究所附属病院でのみ治療を受けられます。

G47Δは国産の遺伝子治療用製品として2つめのもので、日本で初めてのウイルス療法製品です。脳腫瘍以外の固形がんにも効果が期待でき、現在も治験が行われています。

参考:東京大学医科学研究所「世界初の脳腫瘍ウイルス療法が承認 ~東大発のアカデミア主導創薬で新しいがん治療モダリティ実用化~」

最新がん治療「ウイルス療法」は直接攻撃&免疫活性化の効果が期待できる

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最新がん治療「ウイルス療法」は、直接攻撃と免疫活性化のダブル効果が期待できます。先述したようにウイルス療法で使用するG47Δは、がん細胞でのみ増殖し直接破壊が可能です。

さらにこの治療では、がん細胞が破壊されることによって体内の免疫の働きが強まります。免疫が高まることでがん細胞をより攻撃し、がんを抑え込む「免疫療法」としての効果が期待されています。

参考:東京大学医科学研究所「世界初の脳腫瘍ウイルス療法が承認 ~東大発のアカデミア主導創薬で新しいがん治療モダリティ実用化~」

最新がん治療「ウイルス療法」は抗がん剤や放射線よりも副作用が軽い

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最新がん治療として世界で注目されているウイルス療法は、抗がん剤や放射線よりも副作用が軽いという特徴があります。

東京大学医科学研究所の発表した報告によると、最も頻度の高い副作用は発熱で、免疫反応が原因とされています。熱のため入院を延長になったのはG47Δが投与された16名のうち2名のみで、治療の安全性が高いという結果になりました。

参考:東京大学医科学研究所「残存・再発膠芽腫への最大6回の腫瘍内反復投与で1年生存率84%ーウイルス療法薬G47Δを実用化に導いた医師主導治験とFIH試験の最終解析同時報告ー」

他の治療法との併用することで
効果が高まる

G47Δを使用したウイルス療法は、他の治療法と併用することで効果が高まる可能性があります。がん治療には3大治療と呼ばれる手術・放射線治療・抗がん剤治療があり、ウイルス療法はそれらの治療と併用できるのではないかと考えられています。

またがん治療の際に大きな副作用がなく、安全性の高いウイルス療法から取り入れて、手術までにがんを小さくしておくといった使い方も期待されています。

参考:からだケアナビ「知っておきたい病気・医療「ウイルス療法」」

最新がん治療「ウイルス療法」の費用は高額療養費制度を利用できる

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ウイルス療法の治療費は、高額療養費制度を利用できます。ウイルス療法は国の制度の元、効果や安全が確認されて一部保険適用になっていますがその薬価は高額です。

価格が高く治療を諦める前に、高額療養費制度で自分に返ってくる金額を確認しておきましょう。制度を利用することによって自己負担額を軽減でき、治療の選択肢を広げることができます。

参考:NHK健康ch「ウイルスの増殖力を利用したがん治療 腫瘍溶解性ウイルス療法とは?」

高額療養費制度とは

高額療養費制度は高額な医療費を支払った際に申請することで、払い戻しを受けられる制度です。年齢や年収などから自己負担限度額が決められており、その金額を超えた分が払い戻されます。保険に加入している人であれば誰でも申請が可能です。

「脳腫瘍ウイルス療法薬」に対して健康保険が適用

日本で初めてのがん治療ウイルス薬「テセルパツレブ」は、脳腫瘍の一種である「悪性神経膠腫」の治療薬として2021年6月に厚生労働省から条件・期限付きで承認され、同年8月に「脳腫瘍ウイルス療法薬」に対して健康保険が適用可能になりました。

現在この治療を受けられるのは東京大学医科学研究所附属病院だけで、治療を受けるには医師からの紹介が必要です。

参考:日本医事新報社「第一三共:がん治療用ウイルス「デリタクト注」が薬価収載[新薬開発・販売 FRONTLINE]」

最新がん治療「ウイルス療法」の治験では有効性が認められている

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G47Δの臨床試験は2009年から東京大学で5年間に渡り実施され、安全性が確認されたため、臨床試験を2015年から2020年まで実施し有効性を確認しました。

神経膠腫の中で最も悪性の強い膠芽腫、グリオプラストーマの患者に投与した治験では、治療完了後1年間生存した患者さんの割合を調査しました。その割合は84.2%と標準的な治療での生存率の平均14%を大きく上回る結果が出ました。

参考:からだケアナビ「革新的ながん治療「ウイルス療法」」

最新がん治療「ウイルス療法」の今後の展開は?

G47Δは脳腫瘍だけでなくあらゆる固形がんに有効であることが動物実験からわかっており、現在も臨床実験が進められています。杏林大学医学部による前立腺がんに対する臨床試験が行われている他、嗅神経芽細胞腫や悪性胸膜中皮腫に対する臨床試験も実施されています。

今後も臨床試験が進み、安全に投与できることが確認できた段階で、患者さんのがん治療の選択肢として選べるようになってくるでしょう。

参考:東京大学医科学研究所「がん治療用ヘルペスウイルスG47Δの実用化へ最終段階」

その他の最新がん治療

当記事ではウイルス療法について解説してきましたが、ウイルス療法以外にも研究されている新しいがんの治療方法があります。2020年に世界で初めて日本で承認された、第5の治療法と呼ばれる「光免疫療法」についてご紹介します。

がんだけをピンポイントに壊す「光免疫療法」

仕組み
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画像引用:先進医療.net

ウイルス療法と同様に、新しいがん治療方法として注目されているのが「光免疫療法」です。光免疫療法はがん細胞にのみ付着する薬剤を投与し、近赤外線を照射することでがん細胞を破壊する仕組みの治療法です。

光免疫療法ではウイルス療法と同じく、正常な細胞を傷つけずにがん細胞を破壊できます。がん細胞が破壊された後にはがん抗原が分泌され、その物質を免疫細胞が認識して免疫を活性化することも期待されています。

参考:先進医療.net「がんだけをピンポイントに壊す「第5の治療法」光免疫療法」

最新のがん治療まとめ

当記事ではウイルス療法と光免疫療法について解説してきました。ウイルス療法は大きな副作用がなく安全性が高いため、さまざまな治療に利用されていくことが予想されます。

まだウイルス療法による治療を受けられる病院は限られていますが、今後はさらにがん治療の選択肢として身近になっていくことでしょう