脈打つ頭痛や立ち上がると頭がズキズキする経験は誰にでも起こり得ることです。しかし、症状が続き、体を動かすのが辛い方は注意しなくてはなりません。
特に立ち上がるときに感じるズキズキする痛みは、片頭痛や緊張型頭痛、さらには脳梗塞などの病気が隠れていることも。片頭痛の症状や前兆を正しく理解し、適切な対策をとることが重要です。
本記事では片頭痛の原因や対処法をご紹介します。症状の特徴や引き起こす可能性のある病気を知ることで早期に対処でき、健康を守る第一歩となります。
片頭痛とはどんな病気?
片頭痛の痛みのメカニズムは完全には解明されていませんが、いくつかの理論が提唱されています。ここでは片頭痛の症状や前兆などを解説します。
片頭痛は脈打つ症状が特徴・原因
片頭痛の症状は、頭の片側または両側のこめかみ付近がズキンズキンと脈打つような痛みが繰り返し起こり、数時間から3日間続くことがあります。
片頭痛は神経系の異常によって引き起こされるという説があり、特に三叉神経系の活性化が関与しているとされています。
さらに片頭痛は吐き気や嘔吐を伴うことがあり、症状をさらに辛くする要因となるでしょう。
また、光や音、においに対して過敏になり、これらが痛みを悪化させることがあります 。
片頭痛は、単なる頭痛以上のものであり、日常生活や仕事に大きな影響を及ぼす可能性があるので、注意が必要です。
一部の人は立ち上がると頭痛が脈打つ、立ち上がると頭痛がするなどの症状を経験することもあります。片頭痛の原因は主に以下の通りです。
<片頭痛の原因>
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片頭痛が起こりやすい人の特徴
片頭痛は、他の人よりも神経系が敏感な人に起こりやすいとされています。脳の神経細胞が刺激によって電気的な活動を生じやすくなります。
これが脳全体に広がることで、視覚や感覚、筋肉の協調運動、バランス維持などの機能に一時的な障害が起きるのです。
また頭痛は第5脳神経(三叉神経)が刺激されたときに起こり、眼、頭皮、前頭部、上まぶた、口、顎から脳に向かって痛みに関する信号を送ります。
刺激を受けると、痛みを伴う炎症を引き起こす物質が脳血管と脳を覆う組織層(髄膜)に放出され、ズキズキする頭痛、吐き気、嘔吐、光や音に対する過敏性を引き起こします。
日本では片頭痛の有病率は約8.4%とされており、一度は経験したことのある方が多いです。
片頭痛が起こる前の前兆
頭痛が始まる前に以下のような前兆が見られることがあります。
- チカチカした光の閃光が見える
- 視界の一部が欠ける
- 視野の一部がギザギザしている
すべての人がこれらの症状を経験するわけではありませんが、前兆を認識しておくことで、片頭痛の発作に備えられます。
もし片頭痛の前兆が見られた場合は、リラックスする時間を取る、適切な薬を飲むなど、事前に対策を講じることができるでしょう。
慢性片頭痛とは
慢性片頭痛とは、片頭痛や緊張型頭痛に似た頭痛が月に15日以上発生し、そのうち少なくとも8日間が片頭痛の基準を満たす場合に診断されることです。この状態は、日常生活に大きな影響を及ぼす可能性があります。
片頭痛の発作は数時間から約24時間続くことがあり、睡眠によって改善するケースが多いです。慢性片頭痛はその頻度と強度から、患者の生活の質に大きな影響を与えることがあります。
頭痛には緊張型頭痛と群発頭痛がある
片頭痛の他に、緊張型頭痛と群発頭痛があります。それぞれ異なる特徴があるので、どちらが当てはまるかをチェックしてください。
緊張型頭痛とは
緊張型頭痛は、頭全体もしくは後頭部に圧迫感や重さを感じるタイプの頭痛で、ストレスや睡眠不足、首や顎の痛み、目の疲れなどが引き金になることがあります。症状は軽度から中等度の痛みで、頭を締め付けられるような感覚が特徴です。
日本では緊張型頭痛の有病率は約22.3%と報告されています。これは一次性頭痛の中で最も高い数値です 。緊張型頭痛は、頭全体に圧迫感や重さを感じる痛みで、軽い胃のむかつきはあるものの、嘔吐することはほとんどありません。
また一部の患者は、緊張型頭痛と片頭痛の両方を経験することがあります。これらの頭痛は原因や症状が異なるため、適切な診断と治療が重要です。
<緊張型頭痛の原因>
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群発頭痛とは
群発頭痛は、目の周りや奥、こめかみに激しい痛みが発生するタイプの頭痛です。痛みは数週間から数ヶ月の周期で発症し、夜間や早朝に起こりやすいです 。年に1~2回、1~2ヶ月間にわたって毎日ほぼ決まった時間帯に痛みが生じる「群発期」があります。
この痛みは非常に強く、「痛すぎてじっとしていられない」と表現されることが多いです。群発頭痛の有病率は1%未満で、特に30代男性に多く見られます。
痛みは片方の目の周りに集中し、鼻水や涙、目の充血などの症状を伴うことがあります。群発頭痛の有病率は1000人に1人程度の割合で起こると報告されており、片頭痛の有病率8.4%と比較するとかなり少ないです。
<群発頭痛の原因>
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二次性頭痛なら命にかかわるので注意!病気の種類は?
二次性頭痛は一次性頭痛(緊張型頭痛や片頭痛など、特定の原因がない頭痛)とは異なり、原因が明確です。血管障害、首、目、内臓の疾患など、さまざまな原因によって引き起こされます。
基本的に二次性頭痛は、一次性頭痛が除外された後に診断されるのが特徴です。以下では二次性頭痛の代表的な疾患を解説します。
危険な頭痛①くも膜下出血
くも膜下出血とは、脳の周りを覆っているくも膜と脳の間で起こる出血のことを指します。
脳の血管に過剰な圧力をかけることにより、動脈瘤(血管の壁にできる袋状の膨らみ)の形成を促し、これが破裂することでくも膜下出血が発生します。
症状としては、突然の激しい頭痛、吐き気や嘔吐、意識障害などです。くも膜下出血は、再出血のリスクが高く、治療を受けない場合重篤な後遺症を残し、最悪の場合は死に至る可能性があります。
これは非常に深刻な状態で、医療機関での緊急処置が必要です。
以下はくも膜下出血の主な原因です。
- 高血圧
- 脳動脈瘤の破裂
- 外傷
- 血管異常
脳動脈瘤自体には自覚症状がほとんどないため、定期的な検査が非常に重要です。
特にリスクが高い年齢に達した場合や、家族歴などによってリスクが高いと考えられる場合には、頭部MRIやMRA(磁気共鳴血管画像)などの検査を受けることで、脳動脈瘤を早期に発見し、適切な治療を受けることができます。
危険な頭痛②脳腫瘍
脳腫瘍は脳や脳を取り巻く組織にできる腫瘍の総称で、種類や原因によってさまざまな症状が現れます。治療で完治することもありますが、腫瘍の種類や進行度によっては重篤な状態になることもあります。
脳腫瘍の症状は、頭痛、吐き気、嘔吐、手足の痺れ、視神経の異常などです。これらの症状は、腫瘍の位置や大きさによって異なります。
脳腫瘍が成長すると、腫瘍の周囲に脳浮腫を引き起こすことがあるため、早期発見が大切です。
脳腫瘍の原因は主に以下の通りです。
- 遺伝子の変異
- 高脂肪食品の過剰摂取
- 過度のストレス
- 喫煙
脳腫瘍には、良性と悪性のものがあります。代表的な悪性脳腫瘍には神経膠腫や中枢神経系悪性リンパ腫などです。
参考:南東北病院
危険な頭痛③脳出血
脳内出血は、脳内の細い血管が破れて出血する状態です。症状は出血の場所によって異なり、頭痛、言語障害、手足の痺れや動かしにくさ、めまい、吐き気などがあります。
出血が脳の特定の部位に影響を与えると、視覚や聴覚の情報処理に関わる部位が影響を受けることも。
脳内出血の原因は以下の通りです。
- 高血圧
- 脳動脈瘤
- 脳動静脈奇形
- アミロイド血管症など
脳内出血は症状や原因が多岐にわたるため、早期発見と適切な治療が非常に重要です。
注意が必要な症状|すぐに受診を
二次性頭痛は、ときに深刻な健康問題の兆候である危険があります。以下のような症状が現れた場合、すぐに医療機関を受診することが重要です。
- 体の片側や手足などに力が入らない
- 突然の激しい頭痛
- 言葉がすぐに出ない
- 視覚障害(ものが二重に見える)
- 言語障害(呂律が回らない)
- 意識の混濁(意識が遠くなる)
- 吐き気・嘔吐
- まっすぐ歩けなくなる
- 痙攣
- 表情が歪む
以上の症状があれば、迷わず病院に行きましょう。
片頭痛は自分でも予防できる!生活習慣の改善・対処する5つの方法
片頭痛は、強い痛みや吐き気、光や音に対する過敏などの症状を伴うことがあります。自宅でできる対処法を知ることで、症状の軽減につながります。
片頭痛の対処法①静かな場所で休む
片頭痛が起きたら、暗い静かな部屋でリラックスすることが効果的です。
その際は、冷たいタオルや保冷剤を使用して、痛む部位を冷やすようにしましょう。理由は血管の収縮により動脈の拍動が抑えられ、ズキズキとした痛みが軽減されるからです。
反対に入浴やマッサージなどによる温めは血管を拡張させ、痛みが増す可能性があります
片頭痛の対処法②カフェインを摂取する
カフェインには血管収縮作用があり、軽度の頭痛を軽減する助けとなることで知られています。
しかし、過剰な摂取は心拍数の増加や不安感を引き起こすなどの逆効果を招く可能性もあるため、注意が必要です。
また、自分の頭痛のタイプを理解し、カフェインが適切かどうかを判断することが大切です。
片頭痛の対処法③痛み止めを使用する
市販薬には急性期の痛みを和らげるための治療薬と、発作の頻度や強度を減らすための予防薬があります。
それぞれの治療薬について理解し、適切な使用が重要です。また、痛み止めは片頭痛の対処法として有効ですが、適切な薬剤の選択と過剰使用を避ける必要があります。自分に合った薬を見つけるためにも、薬剤師や専門医に相談することをおすすめします。
片頭痛の対処法④十分な睡眠をとる
睡眠不足や過剰な睡眠は、片頭痛を引き起こすことがあります。適切な睡眠を取ることで、片頭痛のリスクを減らすことが可能です。
また睡眠は主に体内の恒常性を維持し、記憶を整理する機能を持っています。特に深い睡眠(デルタ波睡眠)またはREM睡眠が不足すると、睡眠ホルモンであるセロトニンが不足し頭痛が起こりやすくなる可能性があります。
セロトニンと睡眠の質との関係は、セロトニンがメラトニンの前駆体であることに起因します。日中のセロトニンの分泌が不足すると、睡眠の質に影響を及ぼす可能性があるのです。
睡眠の質が悪いと睡眠不足や過剰な睡眠を引き起こし、睡眠中や起床時に片頭痛が発生することがあります。
片頭痛の対処法⑤食事に気をつける
片頭痛の方にとって、食生活は非常に重要です。特にチョコレートやチーズなどの食べ物は、片頭痛の要因となる可能性がありますが、個人差が大きいため一概には言えません。
それでも、以下の食べ物に注意を払うことは、片頭痛の管理に役立つかもしれません。
食べ物 飲み物 |
理由 |
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チョコレート チーズ 柑橘類 |
チョコレートやチーズなどに含まれるテオブロミンは、摂取することで血管を収縮させる 効果が切れたときに血管が拡張することで頭痛を引き起こす可能性 |
スナック菓子 インスタント食品 |
スナックやインスタントにはグルタミン酸ナトリウムが含まれていることが多く、過剰摂取することで頭痛を含む様々な健康問題を引き起こす可能性 |
アルコール (特に赤ワイン) |
チラミンを含む食品、亜硝酸塩(亜硝酸ナトリウム)は頭痛を起こしやすい |
また定期的な食事で低血糖が急激に下がるのを避け、ストレスを管理し、環境を整えて質の良い睡眠を確保しましょう。
なお以下の栄養素は片頭痛の予防に良いとされます。
- ビタミンB2:乳製品、卵、緑黄色野菜など
- マグネシウム:海藻、大豆、納豆、豆腐、アーモンド、煎りごまなど
上記の栄養素を含め、バランスの良い食事を意識しましょう。
片頭痛を病院で治す際の治療法
片頭痛は、生活に大きな影響を与える可能性があるため、正確な診断と効果的な治療が重要です。市販の鎮痛薬に頼るだけではなく、専門医の診断と治療を受け症状の根本的な改善を目指しましょう。
片頭痛の診断方法
医療機関での片頭痛の診断には、国際頭痛学会(IHS)の診断基準が用いられます。これには頭痛の特徴、持続時間、頻度などが挙げられます。
医師は頭痛の既往歴、ライフスタイル、薬の使用状況などについて詳しく問診し、必要に応じて採血や画像検査を行い、他の疾患があるかを診てくれるでしょう。
片頭痛の治療法
片頭痛の治療には、トリプタン製剤や吐き気止め、一般鎮痛薬などを使用されます。これらの薬は発作時に痛みを和らげるために処方されることが多いです。
頻繁に発作が起こる場合や、生活に大きな支障出てしまう場合は、予防療法が行われます。予防療法は毎日の内服薬や、2021年から認可された抗CGRP関連抗体薬による月1回の皮下注射治療も選択肢として挙げられます。
片頭痛は適切な診断と治療によって、症状を大きく改善することが可能です。頭痛に悩まされている方は、専門医の診察を受けることをおすすめします。また、日頃から頭痛ダイアリーをつけることで、診断や治療の参考になることがあるので試してみましょう。
片頭痛は何科で診てもらう?
片頭痛は頭痛外来、脳神経外科、脳神経内科(神経内科)など、頭痛治療を専門に行っている病院やクリニックにて受診します。
脳を専門に扱っている先生により、頭痛の種類や原因に応じて最適な治療法を提案してくれるでしょう。
脈打つ頭痛に関するよくある質問
頭痛が頻繁に起こるから気にしなくて良いと考えるのではなく、なぜ起こっているのかを確認する必要があります。ここでは頭痛に関する悩みをまとめました。
偏頭痛を一瞬で治す方法は?
片頭痛を即座に治す確実な方法はありませんが、症状を和らげるための対処法はいくつか存在します。
緊張型頭痛には温熱を、片頭痛には冷却を適用すると良いとされています。また、こめかみ、頭のてっぺん、頭と首の根元などのツボを押すことで、一時的に痛みを和らげることが可能です。
ただし頭痛のタイプによって最適な対処法が異なるため、自分の症状に合った方法を選ぶことが重要です。
偏頭痛持ちの人の特徴は?
偏頭痛は、女性ホルモンの関係から、特に20歳から40歳の女性に多く見られます。
またストレスを強く受ける方や、家族に片頭痛持ちの人がいる場合、発症しやすいとされています。
頭痛の前に光の点滅や、視野の一部が見えなくなるなどの視覚的な異常を経験することも。
その他の前兆として、空腹感、吐き気、眠気、頻繁なあくびなど、頭痛の前にさまざまな前兆が現れることがあります。
立ち上がると頭痛がする原因を知りたい
立ち上がると頭痛がする場合、主な原因としては自律神経の調節障害や低髄液圧症候群などが挙げられます。
自律神経の調節障害は、腹痛や全身の倦怠感、朝の目覚めの悪さなどが原因です。
また低髄液圧症候群は、立ち上がると頭痛やめまいを引き起こす病気です。この症状は脳脊髄液の圧力が通常よりも低下することで、頭痛が引き起こされると考えられています。
その他の可能性としては、側頭部の動脈の炎症が原因で頭痛が起こることがあります。50歳以上の人に多く見られる症状です。
症状がひどい場合や、日常生活に支障をきたす場合は、医療機関での相談をおすすめします。
脈打つ頭痛を改善できないときは病院を利用しよう!まとめ
脈打つような頭痛や、立ち上がると感じるズキズキする痛みは、日常生活に大きな影響を与えることがあります。これらの症状は、片頭痛や緊張型頭痛、さらには脳梗塞など、様々な病気のサインの可能性があるので注意しなくてはなりません。
正しい対策を講じるためには、症状や前兆を正確に見極めることが重要です。例えば、脈打つ頭痛は、血圧が高い状態や特定の脳の疾患に関連していることがあります。
また、立ち上がった際にズキズキする頭痛を感じる場合、体位変換による血圧の変動が原因である可能性が考えられるため注意が必要です。
頭痛の種類や原因を理解し、早期に適切な対応をすることで症状の悪化を防ぎ、生活の質を向上できます。もし、脈打つ頭痛や立ち上がると感じるズキズキする痛みに悩まされている場合は、専門医の診察を受けることをおすすめします。
<この記事でわかること一覧>