体外衝撃波は治療効果がない人はいる?適切な治療回数や痛みについて

整形外科の分野において、痛みや炎症の緩和を目的とした新たな治療法「体外衝撃波」が注目されています。しかし、体外衝撃波治療を受けた患者さんのなかには、「あまり効果が感じられなかった」という人も少なくありません。

体外衝撃波はどういった疾患・症状に適した治療法なのか、適切な治療回数や頻度、治療中の痛みや副作用なども詳しく解説します。

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体外衝撃波の治療効果について

体外衝撃波とは、その名の通り体の外側から衝撃波を与える治療法です。

日本国内ではもともと、腎臓・尿管結石の破砕のために用いられてきた治療法ですが、海外では腱板炎や腱付着部炎といった整形外科の分野でも採用されています。

日本でも体外衝撃波の効果が注目されるようになり、昨今では海外と同様に整形外科の分野でも採用するクリニックが増えてきています。

整形外科における体外衝撃波治療では、主に以下のような効果が期待できるとされています。

  • 痛み・炎症の緩和
  • 成長因子による修復
  • 骨・筋肉・腱・靱帯・皮膚の損傷の治癒を促進
  • 血流の改善
  • 筋肉の緊張緩和
  • 再生医療の効果向上

ちなみに、体外衝撃波による効果が期待できる体内の組織には、主に筋肉や骨、軟骨、靭帯、腱などが挙げられます

▶︎体外衝撃波治療の効果とデメリットは?|適応疾患や頻度についても解説

体外衝撃波の対象となる疾患

体外衝撃波は具体的にどういった疾患の治療に用いられることが多いのでしょうか。整形外科で対象となる主な疾患を部位別に紹介します。

膝の疾患

◆変形性膝関節症

膝の軟骨が損傷しすり減り関節内で炎症を起こし立ち上がり歩行で痛みを生じる病気です

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◆半月板損傷

軟骨を守るために膝関節を内側外側それぞれ間に挟まっている三日月型のクッションが半月板で、損傷すると徐々に軟骨が傷み変形性膝関節症へと進行していきます

◆大腿骨内顆骨壊死

膝の内側の骨が腐って壊死してしまう病気で、骨粗鬆症やステロイド注射も原因の一つです。骨粗鬆症の治療の他、骨切りや人工膝単顆置換術の手術を行うのが一般的です。

◆膝蓋下脂肪体炎

膝蓋骨の下にある脂肪組織が炎症を起こすことで膝の曲げ伸ばしで膝の前側に痛みが生じる病気です

◆鵞足炎

膝を曲げる縫工筋、薄筋、半腱様筋が膝の内側やや下の脛骨の付着部で炎症を起こし痛みを生じる病気です

◆膝蓋腱炎・大腿四頭筋腱炎

ジャンパー膝とよばれることもありますが、膝の下部分に痛みや炎症が生じ、立ち上がる際に痛みを生じる病気です。

股関節の疾患

◆変形性股関節症

多くが股関節臼蓋形成不全が原因で、股関節の軟骨がすり減り骨が変形し、炎症を起こし歩行などで痛みが生じる病気です。痛み止めやリハビリを行うのが一般的ですが、改善しない場合は人工関節置換術を行います。

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◆股関節唇損傷

骨の形の異常で股関節のパッキンに当たる関節唇が損傷してしまう病気です。進行していくと変形性股関節症に進んでいきます。リハビリで改善しない場合は手術を行います。

◆大腿骨頭壊死

大酒飲みに多い病気で、大腿骨頭と言われる大腿骨の股関節部分の骨が腐ってしまう病気です。人工関節置換術が必要になることがあります。

足の疾患

◆足底筋膜炎

足の裏にある足底筋膜とよばれる部分が炎症を起こす病気です

◆アキレス腱炎・アキレス腱付着部炎

アキレス腱が酷使されることで炎症や痛みを起こす病気です

◆モートン病

足の指の間を走っている神経が腫れて歩くと痛みが出る病気です

◆外反母趾・内反小趾

女性にとても多く、ハイヒールや扁平足や遺伝性が原因で足の趾が曲がって痛みを生じる病気です。

>>外反母趾の詳細はこちら

◆変形性足関節症

比較的珍しいですが、足首の軟骨がすり減って炎症を起こす病気で、足首の骨折などのあとに一部変形したまま治ったりすると長期的に起こりやすくなってきます。

いずれの病気もインソールや靴選びがとても大事になりますが、体外衝撃波治療もとても有効な治療法となります。

肘の疾患

◆テニス肘(上腕骨外側上顆炎)・ゴルフ肘(上腕骨内側上顆炎)

手首を動かすための筋腱の肘の上腕骨付着部に炎症を起こします。テニスやゴルフをする方の方がむしろ少なく、中年の男女ともとても多い病気です。

>>テニス肘の詳細はこちら

◆野球肘(外側離断性骨軟骨炎・内側側副靭帯損傷)

野球を本格的にやっている学生に多いスポーツ傷害です。外側と内側で全く違うタイプの傷害を起こします。

>>外側型野球肘の詳細はこちら

◆変形性肘関節症

比較的珍しいですが、骨折後に変形したまま治ると、徐々に軟骨がすり減って肘関節に炎症を起こし痛みが生じる病気です。基本的には薬物療法を行い、手術を行うことは稀です。

肩の疾患

◆石灰沈着性腱板炎

中年女性に多く、原因不明で肩の腱に石灰が沈着することで炎症や強い痛みを引き起こす病気です。体外衝撃波治療や洗浄吸引療法、ステロイド注射などによって劇的に痛みは改善されます。

◆五十肩(肩関節周囲炎)

これも原因不明で中年以降の男女にとても多く、肩の動かした際の痛みや夜間痛を認めますが、石灰沈着性腱板炎よりは多少動かせるのが特徴です。痛み止めの内服や外用薬・注射・リハビリを行うのが一般的です。

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◆肩こり(頚肩腕症候群)

成人以降の女性にとても多い病気で、悪い姿勢の習慣、筋力不足が原因になっていることが多く、外用薬・物理療法・リハビリを行うことが一般的です。

◆変形性肩関節症

比較的珍しいですが、加齢に伴い肩の関節の軟骨がすり減り炎症を起こす場合があります。薬物療法で痛みが取れない場合、人工関節置換術を行うことがあります。

◆肩腱板損傷

加齢に伴って肩を動かすための腱が部分的もしくは完全に断裂しやすくなります。断裂した場合、動かした時の痛みや夜間痛に悩まされることがあります。完全断裂の場合は手術を要する場合がありますが、部分断裂に関してはリハビリなどで治療を行うことが多いです。

手の疾患

◆へバーデン結節・ブシャール結節

指の第1関節や第2関節の軟骨がすり減って炎症を起こして痛みを生じる、中年以降の女性にとても多い病気で、外用薬や物理療法で治療を行う場合が多いです。

◆ばね指・ドケルバン病(腱鞘炎)

色々な指を曲げる時に動かす腱の鞘の炎症で痛みを生じるのがばね指です。親指を伸ばす腱の腱鞘炎をドケルバン病と呼びます。注射や外用薬や物理療法で治療を行い改善しない場合は手術を行います。

>>ドケルバン病・ばね指の詳細はこちら

◆CM関節症

親指のつけ根にあるCM関節の軟骨がすり減り炎症を起こして痛みが出る病気です。注射や外用薬や物理療法で治療を行い改善しない場合は手術を行います。

腰の疾患

◆筋筋膜性腰痛症

成人以降にとても多い病気で、姿勢の悪さや体幹の筋力不足や運動不足など様々な要因で起こります。痛み止めの内服や外用、注射、物理療法、理学療法士のリハビリを行うのが一般的です。

◆腰椎分離症

多くは学生時代にスポーツが原因で腰椎の一部が疲労骨折してしまう病気で、なかなか自然治癒しにくいことが多く、長年に渡り腰痛の原因となります。

骨折

骨折部位が正常にくっ付かず、痛みがいつまで経っても良くならないものが「偽関節」と呼ばれます。繰り返し外力が骨が徐々にダメージを与え起こる「疲労骨折」にも体外衝撃波治療が有効です。

>>偽痛風の詳細はこちら

肉離れ・筋・腱・靱帯損傷

スポーツで起こした肉離れや筋損傷は自然と治癒しますが、瘢痕や痛みが残る場合があります。

以上、体外衝撃波治療の適応の病気をたくさん紹介しましたが、多くは保険適応の保存治療を行いますが、なかなか良くならない場合は体外衝撃波治療も検討してみるのはお勧めできる病気になります。

2種類の体外衝撃波治療

体外衝撃波治療には集束型と拡散型の2タイプがあります。一般的に多く普及しているのは拡散型体外衝撃波治療で、厳密には体外衝撃波ではないため、圧力波治療器と呼ぶように体外衝撃波学会から通達が出されています。集束型が本来の体外衝撃波治療ですが、機器が高額で保険適応も「難治性足底筋膜炎」のみとなるため、なかなか普及していません。

拡散型体外衝撃波は集束型体外衝撃波と比べるとパワーが弱くエネルギーも拡散して深部ほど弱くなってしまいます。組織修復能力は低く、深い部位の損傷に対しては向いていませんが、他の治療法と比べて痛みを大きく緩和することが可能な治療法です。

集束型体外衝撃波はより高エネルギー波で一点集中で損傷部位に当てることが可能で、関節内の病変など深部の損傷に対して痛みの改善に特に有効です。

体外衝撃波の適切な治療回数は?

整形外科における体外衝撃波治療は、一度の治療である程度の効果が実感できるケースもあれば、複数回にわたって通院が必要なケースもあります。

1回あたりの施術時間は拡散型は2~3分程度集束型は10分程度で、1~2週間程度の間隔を空けて3〜5回程度の治療を行うケースが多いです。

ただし、1回目で十分出力を上げて受けたのにも関わらず効果が認めない場合は、2回目以降で大幅に改善することは比較的少ないです。拡散型体外衝撃波で効果を実感できなかった場合は集束型体外衝撃波治療を受けることをお勧めします。

体外衝撃波に痛みや副作用はあるの?

どのような治療法であっても、患者さん本人にとっては治療中の痛みや副作用などのリスクが気になるものです。

拡散型体外衝撃波治療の場合、治療後に一時的に内出血や赤みが出る場合がありますが、短期間で消えるので心配ありません。

治療中は部位によっては、出力を上げるにつれて当てている部位に痛みが生じますが、麻酔なしでも十分に耐えられる程度の痛みで行います。

治療直後から生活動作に特に制限はなく、すぐに日常生活に戻ることができますが、治療当日や翌日以降に当てた部位に一時的に痛みが生じることがあります。

体外衝撃波治療で治療効果がない人とは

体外衝撃波治療は、痛みや炎症が広範囲にわたっているケースや、骨折の治癒不良や筋肉の凝りなどに効果が期待できます。

また、もともと体外衝撃波治療の治癒効果には個人差があり、同じような症状・病気であっても高い効果が出る人もいれば、たまにあまり効果が実感できない方もいらっしゃいます。

そのため、自分にとってどの治療法が適しているのかを医師に相談しながら、最適な治療法を選択することが大切です。

体外衝撃波治療で効果が得られなかった場合の治療方法

体外衝撃波治療を試みたものの、思うような効果が得られなかった、または治療適応外と診断された場合、どういった治療法が考えられるのでしょうか。代表的な2つの方法を紹介します。

ハイドロリリース

ハイドロリリースとは、別名「筋膜リリース注射」ともよばれる治療法です。肩こり、五十肩、腰痛などに効果を発揮します。初回は保険適応になっており、効果もかなり期待できるため、上記の病気と診断された場合は先にハイドロリリースを試してみるのもお勧めです。

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再生医療

再生医療とは、患者さん本人の血液や細胞を抽出・培養し、ふたたび体内に注入する治療法です。PRP療法や脂肪幹細胞治療といった治療法があり、いずれも副作用のリスクが低く安全性に優れているのが特徴です。

▶︎PRP療法の注射が膝や股関節に効果的な理由とは?副作用はある?

イノルト整形外科の体外衝撃波治療外来の特徴

体外衝撃波治療は整形外科の分野でも比較的新しい治療法であり、対応できる医療機関は限られています。近所に体外衝撃波治療を提供しているクリニックや病院が見つからない方は、イノルト整形外科へご相談ください。

体外衝撃波治療専門外来はもちろんのこと、ハイドロリリース専門外来や再生医療専門外来なども設置しており、患者さんの状態や疾患に合わせてオーダーメイドでの治療を提供します。

これまでさまざまな治療を受けてきたものの、症状が一向に改善しないという方にも、整形外科専門医が診察のうえ最適な治療法を提案させていただきます。

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まとめ

体外衝撃波治療は体のさまざまな部位の痛みなどに効果的で、痛みや炎症の緩和効果が期待できる革新的な治療法です。

副作用も少なく安全性にも優れていますが、自費の治療になってしまうというデメリットもあります。

最適な治療法を選択するためには、ハイドロリリースや再生医療などさまざまな選択肢も視野に入れながら、整形外科専門医の診察を受けることが大切といえるでしょう。

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この記事の監修医師


藤沢駅前 順リハビリ整形外科  院長 渡邉 順哉

■詳しいプロフィールはこちらを参照してください。

経歴

●東邦大学 医学部 卒業
●横浜市立大学附属市民総合医療センター 整形外科
●イノルト整形外科 院長

 

 

 

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