骨粗鬆症の診断基準について|どんな検査をする?費用についても解説

加齢とともに骨密度が低下し、ちょっとした衝撃や運動で骨折をする方も少なくありません。

このような方は骨が脆くなる「骨粗鬆症」を発症しているケースが多く、早期の治療が必要です。

しかし、骨粗鬆症は外見で判断することが難しく、専門的な検査を受けなければ診断ができません。

そこで本記事では、骨粗鬆症はどのようにして診断されるのか、検査方法や費用なども詳しく解説します。

骨粗鬆症の診断基準

骨粗鬆症に該当するかどうかの診断基準は、「原発性骨粗鬆症の診断基準(2015年度改訂版)」で定義されています。

主な診断基準のポイントとして、脆弱性骨折の有無と骨密度の2つが挙げられます。

脆弱性骨折とは、「低骨量(骨密度がYAM※の80%未満、あるいは脊椎X線像で骨粗鬆化がある場合)が原因で、軽微な外力によって発生した非外傷性骨折、骨折部位は脊椎、大腿骨頸部、橈骨遠位端、その他」と定義されています。

※YAM=腰椎は若年成人(20〜44歳)、大腿骨近位部は20~29歳女性の骨密度平均値

具体的にどのような診断基準で骨粗鬆症と判断されるのか紹介しましょう。

脆弱性骨折「あり」の場合

脆弱性骨折がある方は、以下の条件に該当する場合に骨粗鬆症と診断されます。

  1. 椎体骨折または大腿骨近位部骨折あり
  2. 1以外の脆弱性骨折があり、骨密度がYAMの80%未満

脆弱性骨折「なし」の場合

脆弱性骨折がない場合でも、以下の条件に該当する場合は骨粗鬆症と診断されます。

  1. 骨密度がYAMの70%以下または-2.5SD(標準偏差)以下

▶︎骨粗鬆症が治った人はいる?原因・症状・治療・予防を簡単解説

骨粗鬆症の検査の種類

骨粗鬆症の診断をするために骨密度の測定は欠かせない要素ですが、具体的にどういった方法で検査が行われるのでしょうか。

代表的な3つの検査方法を紹介します。

DXA法

DXA(デクサ)法はもっとも広く使われている骨密度測定法であり、2種類のX線で骨密度を測定します。

超音波法やMD法に比べて手間がかかりますが、その分測定精度は高く、全身のさまざまな部位の骨を検査できるのがメリットです。

骨粗鬆症の診断基準では原則として、この検査法で腰椎および大腿骨を測定することとなっています。

超音波法

超音波法は、かかとに超音波を照射し骨密度を測る方法です。

DXA法とは異なり放射線を使用しないため、放射線被曝のリスクがありません

妊娠中の方でも安全に検査ができるという点はありますが、測定結果はDXA法と比べ正確さに欠け、DXA検査をするかどうかのスクリーニング検査であり、診断や治療判定には推奨されていません。

最近では、腰椎や大腿骨の骨密度を測定できる最新の超音波検査機も発売が開始されていますが、まだまだ一般的とはいえません。

MD法

MD法は手をX線で照射し骨密度を測定する検査方法です。

アルミニウム製の板もX線で撮影し、両者を比較することで骨密度を測るという仕組みで、比較的簡単に検査ができます

ただし、こちらもDXA法と比べ正確さに欠け、DXA検査をするかどうかのスクリーニング検査であり、診断や治療判定には推奨されていません。

▶︎骨粗鬆症の初期症状は気づきにくい?|骨粗鬆症の原因も解説

骨粗鬆症の検査をおすすめしたい人の特徴

骨粗鬆症の検査はどのような人が受けるべきなのでしょうか。

中年期以上の女性と高齢男性

骨粗鬆症のリスクは年齢とともに増加する傾向が見られます。

特に、女性の場合は40歳、男性の場合は50歳に達したら少なくとも毎年検査を受けておくことがおすすめです。

また、女性の場合は男性に比べて骨密度が低い傾向にあり、さらに閉経前後はエストロゲンとよばれる女性ホルモンの分泌量が著しく低下することで一気に骨密度が下がり骨粗鬆症のリスクが高まることから、40代おそくとも50歳までに定期検査を始めるようにしましょう。

骨折歴のある人

骨粗鬆症の検査を受けた結果、骨密度に問題がないと診断された方も受けたことがない方も、その後転倒や事故などによって骨折した経験がある方は再度検査を受けることがおすすめです。

骨折した場合、通常よりも骨が弱くなっている場合が多いためです。

運動不足の方、偏食の方、喫煙や飲酒の習慣のある方

運動の習慣がない人や、日常的に飲酒や喫煙をしている人、偏った食生活を続けている人は、骨密度が低下している可能性があります。

特に、カルシウムやビタミンDの摂取が不足していると骨密度が低下しやすく、骨粗鬆症のリスクを高める可能性もあります。

▶︎骨粗鬆症の予防対策|食べ物・運動・サプリ・薬などにわけて紹介 

骨粗鬆症の検査にかかる費用

骨粗鬆症の検査は保険適用となり、DXA法で腰椎や大腿骨周辺の骨密度を測定する場合には1回あたり保険割合にもよりますが約500円~1,500円程度で受けられます。

また、簡易的に検査ができる腕や踵などの部位や、超音波法やMD法などの方法であれば、診療所やクリニックによってはさらに安価な費用で受けられるところもありますが、安かろう悪かろうですので、できる限り腰椎や大腿骨検査を受けましょう。

骨粗鬆症と診断されたらどんな治療をする?

検査を受けた結果、骨粗鬆症と診断された場合にはどういった治療を受けるのでしょうか。

骨粗鬆症の状態は骨の強度が著しく低下している状態であり、食事や運動といった生活習慣の見直しも当然必要にはなりますが、骨粗鬆症治療薬による治療なしでは治すことが難しい病気になっています。

投薬治療で用いられる薬は主に以下の3種類です。

骨の破壊を抑える薬

私たちの骨は常に古い骨は壊され、新しく骨が作られるという新陳代謝が行われています。

このように骨を壊す働きのある細胞が骨の表面に存在します。

この働きを抑え、骨の破壊を抑える薬を投与します。

代表的な薬には以下の4種類があります。

  • 選択的エストロゲン受容体作働薬(SERM、サーム):飲み薬
  • ビスホスホネート製剤:飲み薬または注射
  • 抗RANKL抗体:注射のみ

新しい骨を作る薬

破骨細胞の働きを抑える治療は骨密度の上昇が緩やかで骨折の危険性が特に高いような重症な骨粗鬆症の方は治療中に骨折してしまうリスクが高くなっています。

そこで、新たな骨を作るのを早めてくれる薬を投与することで短期間で骨密度を上げ、さらには骨密度ともに骨の強度として大事になる骨質も改善することで骨折のリスクを大幅に下げることが可能になります。

注射製剤のみで、患者様ご自身で注射するタイプと毎週通院して注射をしてもらうタイプがあります。

治療期間は1年半~2年と決められており、終了後は別の治療薬への変更が必要になります。

  • 副甲状腺ホルモン薬(テリパラチド、アバロパラチド):注射のみ

骨の破壊を抑えつつ骨形成を促進する薬

上記で紹介した2つの働きを持ち合わせる薬もあります。

骨形成を促進しながら骨の破壊を抑えることで、どの治療薬と比べても骨密度が短期間で最も増加し骨粗鬆症のリスクを低減します。治療期間は1年間で、その後は別の治療薬への変更が必要になります。

  • 抗スクレロスチン抗体:注射のみ

骨の代謝をサポートする薬

骨を強化するためには、食事から必要な栄養素を摂取する必要があります。

しかし、十分に食事から栄養素を摂ることができていない方に対しては、骨の代謝をサポートし強くするための薬が処方されます。

代表的な薬は以下の5種類があります。

  • 活性型ビタミンD3:飲み薬
  • ビタミンK2:飲み薬
  • ビタミンB(6、12、葉酸):飲み薬
  • カルシウム:飲み薬
  • マグネシウム:飲み薬

痛みの緩和に用いられる薬

骨粗鬆症が進行し背骨が圧迫骨折すると、強い痛みを伴うこともあります。

これを緩和するために、薬が用いられることがあります。ただし、骨密度を上げる効果は弱いため、骨粗鬆症の治療として単独で用いられることは基本的にはありません。

  • カルシトニン:注射のみ

イノルト整形外科の骨粗鬆症専門外来の特徴

骨粗鬆症の診断を受けたことがあるものの、治療ができていない、または検査そのものを受けた経験がない方も多いのではないでしょうか。

加齢とともに骨粗鬆症のリスクが高まっていることは認識していても、どの病院を受診すれば良いのか分からず放置しているという患者さんも少なくありません。

もし、そのような悩みや不安を抱えている場合には、イノルト整形外科へご相談ください。骨粗鬆症専門外来を設置しており、精度の高い骨密度検査はもちろん、専門医による骨粗鬆症の治療にも対応しています。

まとめ

骨粗鬆症は生活習慣の改善だけで治療をするのは困難であることから、適切な治療薬を用いながら継続的に治療に取り組んでいく必要があります。

まずは検査を受けたうえで、骨粗鬆症と診断された場合には、患者さんとともに骨粗鬆症の改善に向けて根気強くサポートや治療に取り組んでくれる専門の医療機関を受診しましょう。

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この記事の監修医師


藤沢駅前 順リハビリ整形外科  院長 渡邉 順哉

■詳しいプロフィールはこちらを参照してください。

経歴

●東邦大学 医学部 卒業
●横浜市立大学附属市民総合医療センター 整形外科
●イノルト整形外科 院長

 

 

 

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