膝を曲げると突然痛い!原因と治し方を外側・内側別に徹底解説

膝を曲げると突然痛みが出ることはありませんか?

日常生活の中で膝を曲げる場面はしゃがむ動作をはじめ、様々な場面でみられます。

膝を曲げて痛みが出ると、日常生活が苦痛になってしまいます。

「膝を曲げたときに突然痛い」を早く解決するための、原因として考えられる疾患とその治療法についてご紹介します。

膝を曲げると痛みが発生!症状で考えられる原因と治療法

膝を曲げると痛いときの症状別に列挙しています。

 内側が痛む

  1. 膝の内側 下方5〜7㎝ほどの場所に痛みがある
  2. 痛みがある部位に腫れや押したときの痛み(圧痛)、熱感がある
  3. 特に運動時や階段を下る時、歩くときに痛みが出る

このような症状で考えられるのは「鵞足炎(がそくえん、Pes Anserine Bursitis:PAB)」です。

鵞足炎は、鵞足(がそく)と呼ばれる膝の内側下方の脛骨の周囲に炎症が生じる病気です。

「鵞足」とは、脛骨というスネの骨の内側(膝から5-7㎝ほど下)に位置し、

  • 縫工筋
  • 半腱様筋
  • 薄筋

と呼ばれる膝周囲の筋肉の腱が骨にくっつく部位(付着部)です。

この部位にある滑液包に炎症が生じている状態が鵞足炎です。

滑液包(Bursae)とは、膝をはじめ、多くの関節に存在する小さなゼリー状の袋です。

少量の液体が含まれており、骨と軟部組織の間に存在し、摩擦を軽減するクッションとして機能します。

鵞足炎は膝の屈曲や股関節の内転動作によって滑液包に負担が繰り返し掛かることで炎症を起こしてしまい、慢性的な痛みが生じます。

アスリートをはじめとしたスポーツ選手に生じやすく、また、スポーツをしていなくても打撲などをきっかけに発症することもあります。

前述したように、鵞足炎は鵞足にある滑液包の炎症(滑液包炎)が原因として起こります。

滑液包炎は通常、繰り返される摩擦と物理的なストレス(メカニカルストレス)によって発症します。

特に膝の屈曲や内旋動作が鵞足への負担となります。

鵞足炎は、ランナーをはじめとした競技者(アスリート)のうち、特に縫工筋、半腱様筋、薄筋と呼ばれる筋肉に硬さが強い場合に頻繁に生じます。

また、アスリートだけでなく変形性膝関節症の人にもみられます。

さらには、打撲のような外傷も鵞足炎の発症のきっかけになることもあります。

鵞足炎には以下のようなリスクファクター(発症に寄与する可能性が高まる要因)があります。

  • 不適切なトレーニング
  • 縫工筋、半腱様筋、薄筋の柔軟性低下
  • 急な坂道のランニング
  • 走行距離の急激な増加
  • ハムストリングの硬さ
  • 肥満
  • 変形性膝関節症
  • 内側半月板損傷

鵞足炎の治療としては、理学療法や注射などの保存療法が一般的です。

鵞足炎では太ももの筋肉が硬くなると症状が悪化するので、ストレッチで緊張を弱めることが効果的です。

外側が痛む

  • 膝の外側が痛む
  • 痛みがある部位に腫れや押したときの痛み(圧痛)、熱感がある
  • 運動中、運動後に痛む

このような症状で考えられるのは、腸脛靭帯炎(ちょうけいじんたいえん:別称ランナー膝)です。

腸脛靭帯炎は、「膝の外側が痛む」症状があり、鵞足炎と同様、ランニングなど、繰り返し膝を曲げ伸ばしする過剰なストレスによって発症することが多い病気です。

腸脛靭帯炎の発症原因は必ずしもランニングに限定されませんが、ランニング動作でよく生じるため、“ランナー膝”とも呼称されます。

腸脛靭帯は太ももの外側を通る大きな靭帯で、体が外側に傾かないよう強くストップをかける働きをしています。

下肢の機能と構造が良好な人はトラブルが起こりにくいのですが、O脚の人や股関節が硬い方は、腸脛靭帯が過度に引き伸ばされ、摩擦が生じやすく、炎症を引き起こします。

原因としては、腸脛靭帯炎はランニングやサイクリングなど、膝の屈伸を繰り返す運動により起こるオーバーユース症候群(使いすぎ)といえます。

繰り返される動作により、大腿骨の出っ張りと腸脛靭帯が何度もこすれることになり、膝の外側が痛くなってきます。

初期のうちは運動中や運動を終えたあとに痛みますが、安静にしていると痛みはなくなります。

しかし、腸脛靭帯炎が悪化すると、歩行時や安静時にも膝の外側に痛みを感じるようになります。

長く続く炎症に対しては少量のステロイド薬注射などを行い一旦痛みを緩和した後、原因に対する理学療法を行います。

また、治療用のインソールをオーダーメイドで作成し使用し、膝への負担を減らす方法が取られることもあります。

20代で痛む

関節リウマチ(rheumatoid arthritis: RA)は、高齢者や女性の病気と思われがちですが、実はそんなことはなく、30代で発症する患者さんも多くいます。

女性の割合が多いとされていますが、もちろん、男性の患者さんもいます。

関節リウマチとは、免疫の異常により関節に炎症が起こり、関節の痛みや腫れが生じる病気です。

進行すると、関節の変形や機能障害を来たします。

原因は未だ不明ですが、遺伝的要因や、喫煙、歯周病などの環境要因の関与が指摘されています。

関節リウマチになると、膝関節に関わらず、全身の関節(特に小さい関節)の痛みが出現します。

また、若年で膝が痛い場合、靭帯損傷による膝の痛みの可能性もあります。

スポーツでの外傷や交通事故などで大きな力が膝に加わった時に、その外力の方向に応じて種々の靭帯損傷が生じます。

一般的に、外反強制により内側側副靭帯が、内反強制により外側側副靭帯が損傷し、また脛骨上端の前内方に向かう外力で前十字靭帯が、後方への外力で後十字靭帯が損傷します。

最も頻度が高いのは内側側副靭帯損傷です。

外側側副靭帯を単独で損傷することは非常に稀です。

非常に強大な外力を受けると複数の靭帯に損傷が及ぶこともあります。

中高年

中高年以降であれば、変形性膝関節症の可能性もあります。

初期では立ち上がり、歩きはじめなど動作の開始時のみに痛み、休めば痛みがとれますが、つぎに正座や階段の昇降が困難となり(中期)、末期になると、安静時にも痛みがとれず、変形が目立ち、膝が伸び切らず、歩行が困難になります。

原因は関節軟骨の老化によることが多く、肥満も関与しています。

また骨折、靱帯や半月板損傷などの外傷、稀ですが化膿性関節炎などの感染の後遺症として発症することがあります。

加齢によるものでは、関節軟骨が年齢とともに弾力性を失い、使い過ぎにより、すり減り、関節が変形します。

変形性膝関節症の治療では、症状が軽い場合は痛み止めの内服薬や外用薬を使ったり、膝関節内にヒアルロン酸の注射などをします。

また大腿四頭筋強化訓練、関節可動域改善訓練などの理学療法を行ったり、膝を温めたりする物理療法を行います。

足底板や膝装具を作成することもあります。

このような治療でも治らない場合は手術治療も検討します。

手術では、関節鏡(内視鏡)手術高位脛骨骨切り術(骨を切って変形を矯正する)人工膝関節置換術などがあります。

▶︎膝の上が痛い人必見!原因や対処法・効果的なストレッチ方法を解説

膝を曲げたときに痛みがあるときの市販薬の使用方法

膝を曲げたときの痛みに対して、市販の薬では、

  • 痛み止めの内服薬
  • 消炎鎮痛剤(塗り薬や湿布など)
  • コンドロイチン製剤

などが適応になります。

一般的な関節痛では関節内部や周辺で炎症を伴い、場合によっては腫れます。

これらに対してはロキソニンをはじめとする鎮痛剤が有効です。

関節の痛みに対しては内服薬と同様に一般的な痛み止めを使用しますが、患部が可動部であるという特徴から外用薬は塗り薬を使用するのが望ましいといえます。

また、関節でクッションの役割を果たす軟骨の保護・再生にコンドロイチン製剤が使用されます。

コンドロイチンを主成分とした薬は数多く市販されています。

▶︎膝の痛みにヒアルロン酸注射が効果的?副作用や打つ回数は?

膝に痛みがある時に試したい簡単なテーピングテクニック

膝関節は屈伸(曲げ伸ばし)には強い構造を持つ関節ですが、ねじれや側方への動揺(ゆれ)、物理的ストレスには弱い側面があります。

膝の痛みがある場合、膝関節の固定性を向上させ、安定させる目的でテーピングを行うことがあります。

簡単にできるテーピングテクニックをご紹介します。

  1. 25センチの長さのテープを2本、10センチの長さのテープを1本用意します。(合計3本)
  2. 25センチの長さのテープを膝のお皿(膝蓋骨)の下・外側からお皿の内側に沿ってふとももにかけて貼ります。
  3. もう1本の25センチの長さのテープをお皿の下・内側からお皿の外側に沿ってふとももにかけて貼ります。25センチの2本のテープはX字に重なります。
  4. 10センチのテープをお皿の下に貼り、下からお皿を持ち上げるように両端を上げてU字型に貼ります。

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膝を曲げた時の痛みを和らげるストレッチ方法

鵞足炎が疑われる場合は、ふとももの裏側とふとももの内側のストレッチが効果的です。

まず、あぐらをかいて床に座ります。片脚を伸ばし、もう一方はあぐらのままです。

この状態で体を前方へ倒し、10〜20秒この状態を維持します。

伸ばした脚の裏側で筋肉が伸びるのを感じながら行います。

太もも内側のストレッチとして、足の裏を伸ばすストレッチの姿勢のまま、今度は伸ばした脚のつま先を内側に倒します。

そして伸ばした脚の方へ体を倒していきます。

伸ばした脚の太ももの内側の筋肉が伸びることを意識します。

腸脛靭帯炎(ランナー膝)のストレッチとしては、脚を伸ばして座り、片方の脚をクロスさせて立てます。

その脚を、逆側の手で押さえ、上半身を後方へ捻っていきます。

立てた脚のうしろへ振り向くようなイメージです。

大事なことは腸脛靭帯、つまり太ももの外側を意識しながら行うことです。

腸脛靭帯、つまり太ももの外側が伸びていることを感じながら、両側の脚に行います。

ただし、炎症が強い時期(痛みの強い時期)にストレッチを過度に行うと、かえって症状が増悪することがあります。

軽いストレッチに留め、十分な局所の安静とともに、アイシングや消炎剤の塗布、消炎鎮痛剤の投与などを併用する必要があります。

▶︎膝に突っ張りを感じる原因や疾患・解消するストレッチ方法を解説

膝を曲げた時の瞬間的な激痛なら病院受診を

膝を曲げたときに瞬間的な激しい痛みがあるような場合は、筋肉の断裂や関節内の激しい炎症が起きている可能性があります。

できるだけ早く病院を受診しましょう。

イノルト整形外科は患者に合わせたオーダーメイド治療を提供

イノルト整形外科では、「関節外来」を設け、膝や肩まどの関節の痛みに特化して診療、治療を行っています。

患者様の訴えを丁寧に診察・ヒアリングし、再生医療等の各種最新治療法と丁寧な治療を行います。

ぜひお気軽にお越しください。

まとめ

膝を曲げたときの突然の痛みは、

  • 鵞足炎
  • 腸脛靭帯炎
  • リウマチ
  • 靭帯損傷
  • 変形性膝関節症

などの病気の可能性があります。

治療法は原因となる疾患によって異なりますが、炎症が強い場合は安静にし、痛み止めの内服薬や消炎鎮痛剤を併用しながら、理学療法、ストレッチや装具、テーピングなどで対応していきます。

炎症がおさまると痛みもましになりますが、再発防止のために適度な運動やストレッチを普段から行い、怪我や病気に負けない体を作っておくことが大切です。

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この記事の監修医師


藤沢駅前 順リハビリ整形外科  院長 渡邉 順哉

■詳しいプロフィールはこちらを参照してください。

経歴

●東邦大学 医学部 卒業
●横浜市立大学附属市民総合医療センター 整形外科
●イノルト整形外科 院長

 

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