今回は、肩甲胸郭関節の基礎についてお話しします。
肩関節は肩甲骨・鎖骨・上腕骨・胸郭から構成され、解剖学的肩関節と機能的肩関節に分けられます。
解剖学的肩関節には肩甲上腕関節・胸鎖関節・肩鎖関節があり、機能的肩関節には第二肩関節・肩甲胸郭関節があります。
肩甲胸郭関節は肩関節運動において非常に重要な働きを行います。
皆さんもご存じの通り、肩屈曲時の肩甲上腕リズムでは2:1の割合で肩甲上腕関節と肩甲胸郭関節が動きます。肩を180°屈曲する場合では肩甲上腕関節が120°動き、肩甲胸郭関節が60°動くということになります。このことを考慮すると、最終域までの可動性を出すためには肩甲上腕関節、肩甲胸郭関節どちらもアプローチしていくことが重要だとわかります。
肩関節周囲炎において肩甲胸郭関節へのアプローチは炎症期の時期に積極的に行います。
肩関節周囲炎には炎症期・拘縮期・回復期という経過があり、炎症期では患部(肩甲上腕関節・第二肩関節)の安静、患部外(肩甲胸郭関節・肩鎖関節・胸鎖関節)の機能向上が必要になります。患部外の運動時に患部にストレスをかけないように介入していくことがポイントとなります。
また、術後のリハビリでも患部には安静度があるため肩甲胸郭関節へのアプローチを行います。
肩甲胸郭関節の動態は、肩鎖関節軸と胸鎖関節軸によって起こります。肩甲胸郭関節動態を見ていくうえで胸骨・鎖骨・肩甲骨・胸郭の動きを知る必要があります。
まずは鎖骨の動態についてです。
挙上時の鎖骨の動態を三次元的に見ると、挙上・後退・後方回旋が生じており、僧帽筋の上部線維が主動作筋として働きます。反対に拮抗筋として働く筋として鎖骨下筋・大胸筋鎖骨部線維・三角筋前部線維があります。挙上時に鎖骨の動きが制限されている際は拮抗筋へのアプローチをしていく必要があります。
次に肩甲骨の動態についてみていきます。
肩甲骨は肩関節挙上に伴い上方回旋・後傾・外旋します。
上方回旋の主動作筋は僧帽筋(上部線維・中部線維・下部線維)・前鋸筋下部筋束であり、拮抗筋は小胸筋・肩甲挙筋・小菱形筋・大菱形筋になります。
外旋の主動作筋は僧帽筋中部線維・前鋸筋中部筋束・小菱形筋・大菱形筋、拮抗筋は小胸筋・大胸筋。
後傾の主動作筋は僧帽筋下部線維・前鋸筋下部筋束、拮抗筋は小胸筋・烏口腕筋・上腕二頭筋短頭になります。
この肩甲骨の動きの中でいずれも、拮抗筋として小胸筋があることがわかります。このことから挙上動作において小胸筋の短縮は悪影響を及ぼす可能性があると考えられます。
挙上動作時に肩甲骨にフォーカスして見ていくと上方回旋・後傾・外旋が生じ、主動作筋である僧帽筋・前鋸筋の賦活化、肩甲骨動態すべての拮抗筋として働く(制限となる)小胸筋の柔軟性・伸張性の向上を狙ったアプローチをしていくことが重要となります。
最後に胸椎・胸郭について見ていくと、肩関節挙上に伴い胸椎は伸展、胸郭は挙上します。胸椎はTh3~6が動き、Th5が最大に可動します。Th5の可動域向上のためにはTh6を固定した状態で胸椎伸展運動を実施していくとTh5の伸展を誘導することができます。また、キャット&ドッグも運動療法として取り入れていくことで胸椎・胸郭の可動性向上が見込めます。
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